Thursday, May 31, 2012

【本日の化学略語】NBS

化学略語の検索サイト→Nanoniele

NBS: N-bromosuccinimide
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=NBS)



新反応の開発が研究のメインだった学生時代は、見てるだけの化合物でした。

初めて見たのが研究室配属後、同級生が学生実験用の化合物合成で使用していました。

その次に見かけたのが、リチオ化した化合物の臭素化で使用しているところでした。ただ、この実験は失敗に終わりました。というのも、溶媒にTHFを使用したのが原因で、NBSをフラスコに加えたところで発熱反応が起こり、THFのポリマーが生成してしまったのです。

学生時代にNBSを使うことはありませんでしたが、ポスドク時代以降はあれこれ有機合成らしいこともしましたので、頻繁に使うようになりました。主な使用目的は、芳香族化合物の臭素化です。だいたいは、DMFプロピレンカーボネートを溶媒とし、混ぜて攪拌して抽出して再結晶という行程でした。

気を使わずに使える臭素化剤(臭素だとこうはいかない)として、ラボ用冷蔵庫に入れておいて損はない常備薬のひとつです。


Wednesday, May 30, 2012

【本日の化学略語】CN

化学略語の検索サイト→Nanoniele

CN: coordination number
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=CN)

配位数です。

d-ブロック遷移金属錯体では、CNが4とか6とか少なめで、研究も多く行われていたのですが、私が扱っていたのはf-ブロック遷移金属(ランタノイド)錯体で、こいつのCNがもうあれでして。

ランタノイドのイオン半径は、d-ブロック遷移金属のよりも長いため、CNが多くなります。多いだけなら良いのですが、配位不飽和なのをカバーするためにオリゴマー化したりして、構造がカオスだわ溶解性が落ちるわデロデロになるわで、何かと大変な思いをしてました。

私が単離したランタノイド錯体の中で最もCNが少ないのは、Yb(Ph22CNPh)(hmpa)3で、5配位。この錯体、空気中では瞬時に分解しますし、粉末を下手に扱うと火の粉となる、ちょっと危険なものでした。合成法は簡単で、Ph22CNPhと金属YbとHMPAを、THF溶媒中で攪拌するだけ。THF蒸留釜でNa/ベンゾフェノンを作るのとほぼ同じです。

この錯体、HMPA配位子のおかげで超配位不飽和な状態にあり、その性質をうまく使った様々な反応の触媒として使えることを後輩達が見つけてくれました。とても感謝しています。

Tuesday, May 29, 2012

【本日の化学略語】DCPD

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DCPD: dicyclopentadiene
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=DCPD)



この化合物に初めて触れたのは、大学3年の学生実験だったと思います。

シクロペンタジエンと無水マレイン酸のDiels-Alder反応だったと思いますが、シクロペンジエンを得るために、DCPDを熱分解しながら蒸留する必要があり、学生実験にもその操作が組まれていました。

当時の私(達)は、学生実験室のDCPDを蒸留釜へ入れ、加熱して蒸留したわけですが、30分もかからずに蒸留は終わりました。んで、「この実験楽勝〜」とか思っていたわけです。

その後、研究室に配属され、実験にシクロペンタジエンが必要になり、DCPDから蒸留しようとしたわけです。「楽勝楽勝〜」と夕方あたりから始めたわけですが、

いくら待っても出てきませんでした

なんでなんだろとしばらく考えてたのですが…どうやら、学生実験の時に蒸留釜へ入れたのは、DCPDではなく、シクロペンタジエンだったようです。
つまり、担当の先生か、先生の研究室の学生が、予めDCPDを熱分解・蒸留してくださっていた、と。

考えてみれば、そりゃそうです。学生実験では水浴でDCPEを熱分解してましたから(ありえん)。

Monday, May 28, 2012

【本日の化学略語】Bn

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Bn: benzyl
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=Bn)



(画像はBnBr)

Bn基を持つ化合物の中でよく使った化合物は、BnNH2でした。アルデヒドやケトンなと反応させてアルジミンやケチミンを合成し、希土類金属と反応させてどのような生成物ができるかを調べていました。秤量した後、ベンジルアミンが付着した器具を放置していると、表面に付着した液体が白い固体に変わっており、ああ、こいつを扱う時には操作を手早くしないといけないのだなぁと思ったものです。揮発性がそれほど高くないにも関わらずアンモニアのようなにおいがしてましたが、これはベンジルアミンものものなのか、分解して生成したアンモニアなのかは、よくわかりません。

他の化合物としては、画像のベンジルラジカル発生剤として使ってました。この化合物も放置すると分解してHBrが発生するせいか、眼が痛くなってきたことがありました。この化合物を使う人は必ず一声出すという、暗黙のルールが自然にできてました。

使った器具は早く洗うという癖がついたのは、これらの化合物、特にBnBrでの経験が大きいようです。

Friday, May 25, 2012

【本日の化学略語】phen

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phen: 1,10-phenanthroline
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=phen)



この化合部私が使った記憶は薄いのですが、同級生が研究で使用していました。

Grignard反応剤(あえて試薬とはいいません)の滴定に、同僚が使用していましたし、先輩はC-H結合活性化の触媒の配位子として使っていました。

phenの存在を知ったのは、大学3年生の、有機化学の講義で。私の居た大学では、青い表紙で、15 cmはあるかと思われる厚さの、モリソン&ボイドの教科書(英語です)を、1〜3年で使っていました。確かカルボニル化合物のあたりの講義が行われていたはずだったのですが、講義の1/3くらいは、担当の教授の研究の話だったような気がします。着任し研究室を立ち上げて間もなくだったらしく、研究室にいい学生を入れようという意図があったのかもしれません。

で、私はそこの研究室を志望し、配属されたのです。キーワードは触媒。
高校で触媒という言葉を知り、「化学反応で楽ができる」機能が気に入っていたのです。

私は今でも「楽(らく)し〜」で、楽をするためにはどうすればいいか、一日中考えています。


Thursday, May 24, 2012

【本日の化学略語】Py

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Py: pyridine
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この化合物のにおいをはじめてかいだのは学部の3年生の時でした。私が使っていたのではなく、発酵系の学生実験で使われていたピリジンの蒸気が、外へ出ていたのだと思います。ちなみに私は応用化学系でした。

研究室に配属されてからでは、使ったのは修士2年の時だったと思います。希土類金属を使って有機化合物を効率よく還元する時の添加剤を探している時に、アミンの代表として使いました。HMPA)より添加剤としての能力は劣り、無添加と結果が変わらないという残念な結論に達しましたが、その後、ピリジンは塩基として原料合成等で頻繁にお世話になりました。

学生時代、ピリジンを吸うとタネやられるぞとか言われました。また、ピリジンをよく使うと結婚して雄しか生まれないとか、雌しか生まれないとか、そういう話を聞きましたが、話の真偽については正直わかりません。何らかのロジックはあるのでしょうが、裏付けのための統計がないんじゃないかと。ホント、ようわかりません。

Wednesday, May 23, 2012

【本日の化学略語】TFA

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TFA: trifluoroaetic acid
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=TFA)



初めて使用したのはM2の秋ですが、研究室に配属された直後から、先輩が使っていました。

酢酸も純度の高いものは皮膚を侵すことが知られていますが、トリフルオロ酢酸、フッ素原子が3つあるだけあり、それ以上に強烈です。沸点も酢酸より低いですから、濃い蒸気を吸うと、少なくとも呼吸器をやられます。えげつないです。

そんなトリフルオロ酢酸ですが、ランタノイドルイス酸の配位子というかアニオン源として、私は使いました。トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、酢酸を使った場合とどう違うのかを知りたかったのです。いくつかモデル反応を試しましたが、酢酸塩とあまり差がなく、トリフルオロメタンスルホン酸塩より劣り、結局ふかくは追求しませんでした。

ルイス酸としてのランタノイドトリフルオロ酢酸塩は性能としてはあまり良くありませんでしたが、C-H結合活性化の溶媒としては、トリフルオロ酢酸は効果的で、先輩〜後輩、と、大きな成果を出していました。


Tuesday, May 22, 2012

【本日の化学略語】PET

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PET: poly(ethylene terephthalate)
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=PET)

ペットボトルでおなじみのPETです。

学生実験で合成しました。

テレフタル酸とエチレングリコールを所定の温度・時間で加熱してPETを合成し、水酸化ナトリウムでけん化して重合度を求める、という実験内容だったと思います。

PETはビーカーで合成たのだと思います。で、不要なPETを、段ボールの上に延ばしていました。たぶん廃棄するためだったのだと思いますが。

その、のばしてあまり時間の経っていない段ボール&PETを、どうゆうわけか学生実験室の床に置いていて、どういうわけか私がそれを踏んでしまい、靴にPETがべっとりとくっついてしまうことになったのでした。学生実験の中でPETの記憶が濃いのは、そういう苦いことがあったからなのでしょう。

ちなみに、学生実験をした頃は、500mLのペットボトル瓶はまだなかったと思います(2〜3Lのものはありました)。自販機やコンビニには缶かビンか紙パックしか置いてなかったような。


Monday, May 21, 2012

【本日の化学略語】Glu

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Glu: glucose
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=Glu)



サマリウムアルコキシド触媒による向山型アルドール反応で、不斉配位子として使用しました。
学部4年生、卒業研究で、不正配位子のスクリーニングしていたのですが、エナンチオ選択性が20%台で頭打ちとなり、ちょっと困っていました。当時光学活性アルコールは高価で、安価なものがないかとカタログをパラパラめくりながら(1000ページ近くあるカタログからピックアップしてノートにメモしてました)見つけたのが、グルコースでした。

で、使用する量は1gにも満たないのですが、市販されているのは、500gのポリ瓶のみ。仕方ないので500gものを購入、反応を試しましたが…生成物は得られず。グルコースでの検討はこの先行われず、500gの容器が長く試薬棚で眠ることとなりました。

「コーヒーに入れて飲んでやろう」と何度思ったことか…。

話はそれますが、グルコースで反応がうまくいかなかったので、その後、キムワイプで同じ不斉反応を検討しましたが、やはり生成物はほとんど得られませんでした。
ちなみに、キムワイプは予めエタノールで洗浄、乾燥したものを使いました。

Friday, May 18, 2012

【本日の化学略語】TEMPO

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TEMPO: 2,2,6,6-tetramethyl-1-piperidinyloxy
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=TEMPO)




使った経験はありませんが、研究室内の他の人が使用しているのを見た事があります。

C-H結合活性化の研究だったと思いますが、反応がラジカル機構で進行するのかを調べるために、TEMPOを添加したのだと思います。反応はストップし、予想通りだったという結果だったかと。

このTEMPO、似た構造のものがいくつかあり、例えば、メトキシ置換体の4-methoxy-2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-oxyl(MTEMPO)とか、TEMPOのメチレンがカルボニルになった2,2,6,6-tetramethyl-4-oxopiperidine-1-oxyl (TEMPON)とか。

TEMPO、MTEMPO、TENPON、どれも割となじみやすい発音だったりします。

Thursday, May 17, 2012

【本日の化学略語】CAS

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CAS: Chemical Abstracts Services
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=CAS)

のちのSciFinderである。

インターネットがまだ普及していない頃、学科の事務室にあるPCからモデムを介して接続して利用していました。夜間割り引きなるものがあり、夜の7時頃だったでしょうか、モデムをガーガピーピ鳴らし、文字が現れるのを待ち、パスワードを打ち込み…という手順でした。GUIベースのSciFinderとそう変わらない手法で検索できていましたが、構造式からの化合物検索、反応検索等はできませんでした。回線スピードもあまり速くなく、料金は従量制ということもあり、キーワード等を予め決めておいてから「電話をかける」のが常でした。

その後、インターネットが普及し、CASもインターネット経由で接続できるようになりましたが、システムそのものはしばらくはそのままで、単にモデムが不要になったという状況が続いていました。その後、GUIベースのSciFinderとなったわけですが、今でもSciFinderを使う時には、CUI時代の手法で検索したりもします。

CASといえば、福岡に居た頃、中州の飲み屋でJなんとかの職員のおっちゃんとケンカしたことあります(ぉぃ
なんでケンカになったのかはよくわかりませんが、たぶん、CASが使いにくいとか、CASのことなら米国から扱い方を知ることができるのに、Jなんとかのおっちゃん何やっとるんじゃとか、(当時)未だにtelnet接続のCUIベースとか古いんじゃはよGUIアプリ作れとか、そういうのじゃないかなぁと思います。

…あ、あと、酔っぱらって記憶が定かではないのですが、Jなんとかのおっちゃんかだれかが、「大学の人間とかくだらんわ」とか、かなりの上から目線で接してきた、というのもケンカの原因のひとつかもしれません。

後日おっちゃん主催のCAS講習会に行きました。操作法ドヤ顔で説明されましたが、もう知ってた。


Wednesday, May 16, 2012

【本日の化学略語】pTol

pTol: p-tolyl
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=pTol)



(画像はpTolSO3H)

p-tolyl基を持つ化合物は多種類扱ってきました。最初に使ったのはトルエン。その次がPTSでしょうか。

反応基質として初めて使用したのが、4,4'-ジメチルベンゾフェノン。硫化リンでチオケトンにし、希土類金属と反応させました。その次が、4-メチルアニリンで、これはベンズアルデヒドと反応させてアルジミンにしました。4-メチルベンズアルデヒドは、アルジミンにもしましたが、酸化剤(脱ヒドリド剤)としても使いました。

p-Tol基のメリットは、反応混合物を1H NMRで分析する容易さにあります。メチル基のシングレットや芳香環上の水素由来のシグナル等、フェニル基のものよりもよりシンプルでわかりやすい(トルエンや酢酸エチル等が混入してるとややこしくなりますが)。

Tuesday, May 15, 2012

【本日の化学略語】BQ

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BQ: 1,4-benzoquinone
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=BQ)



ランタノイド金属錯体を酸化するために使用しました。

ランタノイド金属とアルジミンを反応させると金属錯体が生成するので、これを酸化するとどうなるのかを調べていました。反応溶媒がTHFで、BQはTHFに溶けてくれず、仕方なくBQ粉末をフラスコに直接入れていました。フラスコ内の反応溶液と混ざれば、BQ粉末は少しずつ金属錯体と反応してくれましたので、手法としてはこれで良かったのではと思っています。

反応後、いろいろ調べると、ジイミンが生成したことがわかりました。BQではなく水と反応させた時にはジアミンが生成したので、ジアミンがBQと直接反応したのかもと、念のためチェックすると、無反応。酸素と反応させた時にもジイミンが生成したので、錯体の酸化が起こったのだという結論になりました。

現象としては理解できましたが、収率が低いので、いろんな酸化剤を試しました。なかなか収率は上がらなかったのですが、アルデヒドを試すと、なぜか収率が向上。

「なんかちがう」

と思いつつも、結果的にはこれでいいやと実験を続けました。
この仕事は博士課程の留学生(当時)さんに引き継いでもらいました。その方は今中国の大学の教授とか。大学の講師職(当時)で、私費での留学で、バイトしながら研究をされており、努力家でした。


Monday, May 14, 2012

【本日の化学略語】XyNC

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XyNC: 2,6-Xylyl isocyanide
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=XyNC)



大学院の修士課程のとき、後輩が合成し、反応に使用していました。
対応するホルムアミドとオキシ塩化リンから合成していたと記憶しています。一酸化炭素の等電子体として、ランタノイド錯体との反応を調べていました。

この化合物を取り扱った感想は「とにかく臭い」。当時は「えげつないにおい」と言っていた気がします。固体ではありましたが、それでも鼻にくる。他のイソシアニドはもっとひどかった。イソシアニドはこうも臭いのかと思い知らされました。

で、肝心の反応はというと、何かしらの化合物が生成。精製し、IRスペクトルを測定すると、イミンらしい吸収があり、NMRR測定を行うとアルジミンと思われるシグナルが。元素分析もOK。当時の助教授の先生とディスカッションし、錯体中の有機基−金属結合への挿入、プロトン化が起こったという結論に。

その後、錯体中のへテロ原子が変わると違う反応が起こることもわかりました。臭い臭いとは言いましたが、相応の実りがあったと思います。

そういえば、一仕事終わっても合成したイソシアニドはまだ残っていたはずですが、あれ、どうなったのでしょうか…。他の人に臭い思いをさせてしまったかもしれません。申し訳ない。



Friday, May 11, 2012

【本日の化学略語】MM

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MM: molecular mechanics
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=MM)

M1の時、新しく着任した助手さんが、Chem3Dで扱っているのを見て、MMの存在を知りました。

分子の立体構造を知るためには、研究室では、分子模型でモデルを組み立てていました。長い間使われていたためか、パーツがかなりなくなっていて、単結合のスティックが少なく、モデルを組み立てられないということがよくありました。買いたいと思い、カタログで価格を調べると…高い。

Chem3Dでモデルをラフに描き、構造最適化し、マウスでぐろぐりやると、モデルの立体構造がどのようになっているか、簡単にわかるのに驚きました。当時(Windows 95もない時でした)のパソコンのスペックでも十分スムーズに動いていました。まあ、構造の最適化にはかなりの時間がかかりましたが。

その後、MOPACを知り、GaussianやらGAMESSやら知るわけですが、これらは「そういうことができる」ことを知った後に触れたわけで、何の予備知識もなかったChem3Dとの出逢いは、本当に衝撃でした。

Thursday, May 10, 2012

【本日の化学略語】DME

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DME: dimethoxyethane
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=DME)



学部の4年生の卒業研究で使ったのが初めてでした。

サマリウムアルコキシド触媒による向山型アルドール反応で、反応溶媒と生成物の収率・エナンチオ選択性の関係を調べていました。DMEは乾燥、脱酸素したものを使う必要がありましたが、ストックはありませんでしたので、何かしらの乾燥剤で乾燥したものを蒸留したはずなのですが、もうすっかり忘れてしまいました。

んで、蒸留したDMEを使用したわけですが、生成物の収率は低く、エナンチオ選択性もほとんど出ませんでした。THFでもダメでしたから、エーテル系溶媒は反応に適さない、ということが言えるので、どうしようもない結果というわけではないのが救いでしたが、当時の実験の技量で苦労して蒸留し、結果がこれだと、さすがに疲れました。でも、それが研究なんだということがよくわかりましたし、あまり引きずることなく次の実験を始めてたと記憶しています。

修士、博士課程でDMEを使用することはほとんどありませんでしたが、DMEと似たtetraglymeは、ヘキサンをナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥する時の添加剤として、よく使っていました。



Wednesday, May 9, 2012

【本日の化学略語】ALD

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Ald: Aldrich
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=Ald)


Sigma-Aldrich社のAldrichのことです。この名前を初めて聞いたのは、学部の4年、研究室に配属された直後でした。

当時、研究室で購入していた試薬は和光純薬、東京化成、関東化学、Nacalaiのものがメインでした。Aldrichのものは、和光純薬のカタログに、Aldと記載されている試薬でも、国内メーカーのものがない時のみ、だったように思います。

私が研究室に配属された当時から、Aldrich社の品揃えは豊富でした。カタログを見ては、「あるどにはあるど〜さぶっ」とか言ってました。

当時は換算レートが1ドル=250円くらいでしたので、Aldrich社のものは高価であり、また、カタログにはあっても輸入手配扱いのものも多くありましたので、どうしてもという時以外は、「高いから作れ!(先生)/どうせ先生に言っても作れと言われるから作る!(学生)」となるのが常でした。

そんな高嶺の花のAldrich試薬ですが、買わないくせにカタログは大人気でした。CASの番号から、比重、屈折率、融点、沸点等、他のカタログよりより多くの情報が入っていましたので、諸物性を手っ取り早く調べるには、Aldrichカタログは好都合な一冊でした。一人あたり一冊に近いほど、Aldrichのカタログが研究室内にあった時も。

ただ、化合物名は、IUPAC名と異なる表記をしていたものもあり、ゼミなどで、「お前その化合物名ちごうとるど、あるどのカタログ見たじゃろ〜」となることも度々ありました。

先日、学会のAldrich社のブースでカタログをいただこうとしましたが、品切れで夏まで待てと言われました。オンラインカタログが充実し、あまり需要がないのでしょう。

Tuesday, May 8, 2012

【本日の化学略語】DBA

化学略語の検索サイト→Nanoniele

DBA: dibenzylideneacetone
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=DBA)



この化合物、私が使用したことは一度もありません(触媒の配位子に含まれているものもです)。

修士課程の1年の秋、新助手さんが研究室に着任しました。着任した翌日でしょうか、突然どこからか3Lの丸底フラスコを持ってきて、おもむろにベンズアルデヒドとアセトン、水酸化ナトリウムを混ぜ、メカニカルスターラーで攪拌し始めたのです。

これには度肝を抜かれました。当時、学生が原料合成で使っていたフラスコは大きいものでも500mLクラスでしたので。

3Lのフラスコの中身は、これまたどこかから持ってきたブフナー漏斗であっという間にろ過され、巨大三角フラスコの中で再結晶され、どこからか持ってきた巨大デシケータの中で乾燥され、結晶は半日足らずで500mLサイズのプラスチックボトルに納められました。

実験室のメンバー一同「なんじゃこのひと!」

以来、DBAという文字を目にする度に、巨大なフラスコを思い出すのです。


Friday, May 4, 2012

【本日の化学略語】MS

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MS: mass spectrometry
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=MS)

装置を初めて使用したのはM1の時でした。それまでは、先輩に取ってもらっていました。

当時のMS装置は確かShimadzuのQP-1000だったと思います。DIとGCの両方できましたが、DIはイオン源が汚れやすいため、怖くて使えませんでした。もちろん今では使えますが。

このQP-1000、記憶装置はフロッピーディスク、しかも8インチです。PCを触っていたので5インチのフロッピーディスクは見慣れていましたが、8インチはでかい。文字が示す通り、本当にペラッペラでしたし、一部磁性体が見えるという、本当に取り扱いに気を使うものでした。

とはいえ、化学系ではよくあることでしたが、ある日、サンプリング用のマイクロシリンジを洗うアセトンをフロッピーディスクの上にこぼし、ディスクを台無しにしてしまう事故も、研究室ではありました。

んで、QP-1000でのデータの取り込みですが、ハードディスクがありませんので、今のようにデータ取りをさせたまま放置することはできませんでしたから、単色緑色のモニタをじっと眺め、フラグメント等のシグナルが現れたところでスキャンボタンを押し、データをフロッピーディスクに保存していました。もちろん、測定中の解析なんてものはできません。

スキャンボタンを押すタイミングを逃せば、サンプリングからやり直しです。当然、GCのオーブンは冷まさなければいけません。スキャンボタンを押したとしても、フロッピーディスクがデータで一杯になれば、エラーが出てやり直しです。フロッピーディスクの容量はたったの128KB。前に測定した人のデータが残っていれば、「危険度」は上がります。

そんなわけでMS測定には、装置や記憶装置にもですが、他のメンバーにも気を使っていました。
とはいえ、当時の世界的な研究ペースは、今と比べてとてもゆっくりしていましたので、MS測定の空き時間に居眠りしたりぼーっとしたりと、自分の時間を簡単に作ることができたのは、良かったんではないかなと思ったりします。


Thursday, May 3, 2012

【本日の化学略語】Tr

化学略語の検索サイト→Nanoniele

Tr: trityl
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=Tr)



トリフェニルメチル基です。

化合物(触媒)として使用したのは、TrBF4が初めてで、エステルのシリルエノラート(KSA)の異性化の触媒として使いました。

当時、KSAの異性化を追いかけていて、別の触媒ではα-シリルエステルが選択的に生成していました。同じ反応が進むか、反応が全く振興しないかのどちらかだろうと思い、プロピオン酸エステルのシリルエノラートを基質とし、反応を仕込みました。プロピオン酸エステルのシリルエノラートには2種類の異性体、すなわち、E体Z体があり、反応に使用したのはE体でした。

所定の時間後、GCで反応の進み具合をチェックすると、ターゲットのα-シリルエステルは全く生成していませんでした。反応は進まないのかとGCチャートをよく見ると…原料のものとはリテンションタイムが少し違うのです。おかしいなと思い、ジクロロメタン溶液を重クロロホルムと混合してNMR測定すると…

生成していたのはZ体でした。

シリルエノラートのE体からZ体への異性化は、後で調べて既に報告例があることがわかりました。ただ、Z体の合成はE体と比べ、添加剤等が必要等煩雑でした。結果として、Z体のシリルエノラートの合成法として、E体の異性化を利用することに。

損して得した、です。


Wednesday, May 2, 2012

【本日の化学略語】TMSOTf

化学略語の検索サイト→Nanoniele

TMSOTf: trimethylsilyl trifluormethanesulfonate
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=TMSOTf)



M2の時、エステルのシリルエノラート(KSA)の異性化の触媒として使用したのが初めてでした。

当時は今よりも反応のスケールは大きく、基質は2 mmol使用していました。触媒は0.1〜1 mol%に設定していましたので、TMSOTfは0.002〜0.02 mmol使用することになるわけですが、悩みました。どうやって量り取るかを。

TMSOTf入りの試薬瓶を開けると、白煙がモウモウと出てきます。ここから0.002mmol量るとなると、マイクロシリンジを使わなければいけない。でも、TMSOTfを取ると、シリンジが詰まってしまう…。

というわけで、多めに取って、反応溶媒と同じ溶媒で希釈して、一部を溶液として取り出して使用することにしました。

でも、白煙モウモウの問題が残っています。グローブボックスなるものはありません(あってもTMSOTfを入れたくない。)。んで、1Lくらいの市販のビニール袋の角を切り、ビニール袋に試薬瓶を入れ、ビニール袋の広口にチューブを付けて輪ゴムを巻き、アルゴンラインにつなぐことにしました。アルゴンを流してビニール袋の中の空気を追い出し、ビニール越しに瓶を開け、切った角から注射針をつっこみ、なんとかTMSOTfを取り出すことができました。

丁寧に取り出したからかどうかはわかりませんが、TMSOTf触媒は対照実験で使ったのに、他の触媒よりも高い活性を示したのでした。

Tuesday, May 1, 2012

【本日の化学略語】PTS

化学略語の検索サイト→Nanoniele

TsOH: p-toluenesulfonic acid
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=PTS)



M2の時、ベンゾフェノンとアニリンからケチミンの合成を行う時に、触媒として使いました。それが最初だと思います。その後も酸触媒として、PTSには幾度もお世話になっています。

ベンズアルデヒドとアニリンの反応は触媒がなくてもスムーズに進むのですが、ベンズアルデヒドをベンゾフェノンに代えただけで反応が全く進まなくなる、ということで、PTSを加え、ベンゼン溶媒中で加熱すると、反応が進み、溶液の色が黄色くなってきました。加熱しており、沸騰しているわけですが、このベンゼン、沸騰がおとなしくない奴でして、たまに突沸をしたりします。この合成反応を進めていた時も、フラスコの中で、ボコッ、ボコッという不穏な音がしてました。

んで、「しょうがないなぁ」と、沸石を入れた瞬間、激しい突沸が起こり、フラスコの中身が飛び出しました。大量というわけではないのですが、マントルヒーターを(電源オフ)生成物の黄色にめ、原料のベンゾフェノンのにおいを放つ、使えないシロモノにしてしまいました。

吹き出しはしましたが、二次晶まで取って、生成物の収率は93%はあったと記憶しています。