Monday, March 24, 2014

【本日の化学略語】TBA

TBA: tert-butyl alcohol



実験ではプロトン源として、時には溶媒として使用しました。融点は25℃くらい。

気温の低い時には固めってますので、薬サジのたぐいで試薬瓶から取り出すのがやりやすい。しかしながら、大気に触れさせたくない場合には、シリンジ等でTBAをはかり取る必要があるのです(グローブボックスの中で扱うのは嫌だなぁ、プロトン源だし。)。

蒸留してストックしてある固体を暖めて液体とし、予め暖めておいた注射針付のシリンジで抜き取り、反応等に使用するフラスコへ移すという、ちょっとやっかいな手順を踏まなければいけないという…。モタモタして注射針を冷やしてしまうと、TBAが固化して針が目詰まりを起こすのです。

あ、試薬瓶が大きく、暖めるのが大変だからと、一部だけ液体になったTBAをピックアップするのアレですから。パピコの最初と最後の味が違うというやつ。

Thursday, March 20, 2014

【本日の化学略語】FL

FL: fluorene



NBSで臭素化したり、n-ブチルリチウムでリチオ化して求電子剤と反応させたりしてました。

NBSの臭素化では、2-ブロモフルオレンと2,7-ジブロモフルオレンの両方が生成してしまうのです。2,7-ジブロモフルオレンは過剰量のNBSを使えば簡単に得られるのですが、当時欲しいなと思っていたのは2-ブロモフルオレン。

ひたすら再結晶です。急いで欲しいわけではなかったので(急用なら市販品を購入するつもりだった)、大量合成したものから、暇な時間を使ってコツコツと再結晶してました。

FL、この略号が使われるのが偶然なのかはわかりませんが、発光材料としてこの骨格を含む化合物がよく合成・使用されてますが、FLそのものは酸化されてフルオレノンになったりすしますし、特に高分子化した時には溶解性が悪くなりますので、アルキル化等して酸化部位を塞いだり脂溶性を高めたり、といろいろ工夫がなされたり。

Wednesday, March 19, 2014

【本日の化学略語】ONP

ONP: o-nitrophenol



芳香族求核置換反応を検討するための基質の前駆体として使用してました。

芳香族化合物というのは、一般的には求電子置換反応が起こり、求核置換反応は起こりにくいと言われていますが、芳香環上にニトロ基等があると、求核置換反応が起こることがあります。脱離基はClやF等。

んで、私はp-トルエンスルホニルオキシ基(p-C6H4SO3)で検討していたのですが、これではダメで、ちょっとゴニョゴニョと工夫したケースについて、実験を進めてました。求核剤がアルコールの場合とアミンの場合で反応の選択性が違ったり、また、OH基とNO2基の位置が結構重要だったり、得られたニトロ化合物をアミンに還元して何かに誘導したりと、いろいろやってました。

何年前だっけな。

Tuesday, March 18, 2014

【本日の化学略語】TBuA

TBuA: tributylamine



実験での主な使用目的は塩基でした。塩基として以外に使用したことはなかったような。

例えばMizoroki-Heck反応では塩基としてトリエチルアミンを使用するのですが、トリエチルアミンの沸点は89℃近く。この温度では、炭素−臭素結合がパラジウム触媒で切断されにくく、臭化物の反応には使用できない。ということで、より沸点の高い(214℃)TBuAを、125℃くらいの反応に使用していました。

反応温度が高いですから、反応は確かに進行してくれる。ただ、TBuAの沸点が高いというメリットは、そのままデメリット。反応後に生成物を分離しようとして、TBuAがなかなか除ききれない、ということも。酸処理でTBuAをアンモニウム塩にして水洗浄にかけても、どうしても有機相に残ってしまう…。

トリプロピルアミンは沸点156℃、エチルジイソプロピルアミンは127℃と他にもいろいろありますが、お値段と相談です。

Monday, March 17, 2014

【本日の化学略語】1-NpCHO

1-NpCHO: 1-naphthaldehyde



この化合物、酸化剤として実験で使用していました。

一般には、アルデヒドは還元剤として機能し、機能した後はカルボン酸になる、というのが教科書的ではありますが、酸化剤として機能し、機能した後はアルコールというのもあります。Meerwein-Ponndorf-Verley還元とかですね。

私が博士課程の学生として研究していた時に、アルジミンを希土類金属で還元して、適当な酸化剤を作用させるとジイミンが生成する実験を行っていました。最初は酸素やキノンを試していたのですが、あるときヤケクソでというわけではなかったのですが、p-トルアルデヒドをフラスコに投入すると、かなりの収率でジイミンが生成したのです。なんでp-トルアルデヒドかというと、ベンズアルデヒド由来のアルジミンを反応させてたからなのですね。生成物に由来の区別がつくように、と。

p-トルアルデヒドでうまくいくのなら、他のアルデヒドを試そうということで、ここからはラボのメンバーにバトンタッチ。1-NpCHOがベストなのが明らかとなり、基質の適用範囲の検討と、反応機構の解明のための実験を行い、論文として発表となりました。

Friday, March 14, 2014

【本日の化学略語】GBL

GBL: γ-butyrolactone



反応基質の原料として使用していました。

GBLをリチウムジイソピルアミド(LDA)でリチウムエノラートとした後、クロロトリメチルシランと反応させてケテンシリルアセタールを合成してました。
向山型アルドール反応や、ケテンシリルアセタールのシリル基の転位反応を検討していたのを憶えています。

このGBL、合成上の厳密性が要求されなければ、購入したものをただちに使用して問題ないのですが、何年も前に購入してラボに保管されていたものを使ったりすると、ドロドロしたわけのわからないものになっていた等、実験が失敗することが多々あり、実際私も経験しました。失敗したら新しい薬品発注すればいいや〜、とか…失敗するのわかってるなら急がば回れで新品使えばいいのに、です。

長期保存されたものは、重合してるんですよね。場合によっては完全に重合して瓶の中身が固体だったり。それはそれで、あ、これアカンやつ、となってよけいな実験しなくてすむわけですが。

…というように、新鮮なものを使え、という、研究のキホンを身をもって示してくれるのが、このGBLです。

Thursday, March 13, 2014

【本日の化学略語】MA (maleic anhydride)

MA: maleic anhydride



市販品は白色の固体。反応の基質として実験に使用したことがあります。
反応ですが、ひとつはDiels-Alder反応。学部3年の最初の学生実験で、シクロペンタジエンと反応させ、付加体を再結晶で精製するというものでした。その後、濃硫酸と反応させたのですが、生成物なんだっけな…忘れてしまいました。

もうひとつの反応はカルベン補足。ジアリールチオケトンと希土類金属を反応させるとカルベンが発生するのではと、補足剤としてMAを選択したのでした。期待したシクロプロパン誘導体は生成せず、なんだかわけのわからないものになってしまいましたが…。カルベンにも一重項ものとか三重項ものとか、電子リッチなものとかそうでないものとかいろいろありますから、カルベン補足剤も適宜選択しないといけなかったわけで。

MAの消化精製は見ていて楽しかった。

Wednesday, March 12, 2014

【本日の化学略語】DMF

DMF: N,N-dimethylformamide



アルデヒドやアルキン合成の基質として使用されることもありますが、私が使用していた主な目的は、反応溶媒でした。基質として使ったのは1、2回くらいじゃないでしょうか。

安価に入手できて、高極性、非プロトン性で、沸点も150℃近いので、遷移金属触媒下での反応によく使用していました。市販品を水素化カルシウムで乾燥して蒸留したものを使用していたこともありますし、購入した瓶から取り出してそのまま、ということも。芳香族化合物化合物の臭素化をする時には後者でした。


余談ですが、DMFの窒素原子がちょっと嫌な時には、プロピレンカーボネートを試したことあります。

Tuesday, March 11, 2014

【本日の化学略語】BN (benzonitrile)

BN: benzonitrile



ベンゼン誘導体は特有の香りがするものが多いですが、この化合物も少量で強く甘ったるい匂いがします。

私の主な実験用途は、反応探索のモデル基質でした。

この化合物に炭素求核剤を反応させ、(ヒドリド還元ではなく)二電子還元でアミンを合成する反応と、o-C-H結合活性化によるベンゼン環への官能基導入でした。
前者はうまくいきましたが、後者は収率が伸び悩んだのに加え、生成物の構造もこれでいいのかなあという怪しさもあり結局お蔵入り。20年経ってから、他の研究グループが同じタイプの反応を報告してました。

当時所属していたラボの主要な研究テーマがC-H結合活性化であり、私は別のテーマの研究をしていたところで、うまく融合できるのではと淡い期待を抱きつつ実験を進めていたのを憶えています。

Monday, March 10, 2014

【本日の化学略語】DMPU

DMPU N,N'-dimethylpropyleneurea





発がん性のあるHMPA (hexamethylphosphoramide)の代替として試したことがよくありました。
HMPAの代替としては、DMI (1,3-dimethyl-2-imidazolidinone)やTMU (1,1,3,3-tetramethylurea)等の尿素系の化合物があり、DMPUもその中のひとつです。高極性の非プロトン性溶媒の他、金属配位子としても機能します。

THF (tetrahydrofuran)中での電子移動を伴う反応で、これらの化合物の添加の効果を調べたことが何度かやりましたが、最も良好だったのがHMPA、次いでDMI, DMPU, TMUでした。TMUに至っては、添加する効果がほとんどないケースもしばしば。HMPAの代替としては、DMPUよりもDMIの方が良さそうです。エーテル抽出&水洗浄で、有機層から水層へ逃げやすいのもDMIでした(HMPAはもっと逃げてくれます)。

逆に考えれば、DMPUは抽出剤として使えるのではないか、とも思ったりもします。

Friday, March 7, 2014

【本日の化学略語】AN (anthracene)

AN: anthracene



紫外光をあてるとペカーっと光る化合物です。このもの自体を材料に何かすることはありませんでしたが、「原料」としたことはありました。ラボで長期間眠っているものは酸化されてるかもしれないので、面倒でも再結晶してから使うが吉。

私がこの化合物を使ったのは、臭素化でした。ジメチルホルムアミド中でN-ブロモコハク酸イミドと反応させて9-ブロモアントラセン、下の画像の左側のほうのを合成してました。混ぜて放ったらかし、適当なところで抽出。



混ぜて放ったらかしの反応ですから、9.10-ジブロモアントラセン、上の画像の右側のも副生するのです。少々混ざってても次のステップには差し支えなかったのですが、別途使うこともあるかもと、再結晶。一度の再結晶では右のと左のとをきれいに分離できないので、純度別に複数のフラスコにわけて再結晶。結晶と母液の純度をそれぞれチェックして、相応の純度のものが入っているフラスコにそれぞれ移動、こいつをまた再結晶…。と、多段式で精製してました。加熱して飽和溶液にして室温冷却、というルーチンワークでしたから、隙間時間に可能なことでしたので(日数はかかりますが、それでも早い段階で少量は高純度品が確保できました)、作業負荷は低かった…と記憶してます。

Thursday, March 6, 2014

【本日の化学略語】Val

Val: valine



研究室に配属されて初めて使ったアミノ酸がValでした。塩酸塩だったと思います。

ペプチド合成とかではなく、エステル化した後にケトンと反応させてイミンとし、希土類化合物と反応させてました。光学活性な希土類金属錯体が生成し、単離できるのではと期待したのですが、結局原料回収。

研究室内での希土類金属錯体の結晶化のノウハウが蓄積し始めた頃で、なんでもかんでも結晶化を試みていました。当時はもっといいインフラがあればと思ったのですが、ぜいたくな悩みでした。研究の場を移るに従い、あのインフラが最高だったのだと思うようになったのです。

Wednesday, March 5, 2014

【本日の化学略語】An (anisyl)



(画像はAnH, anisoleです)

Anは3種類ありますが、特に記載することがなければ、p-anisyl基。

An基を含む化合物はいろいろ使用しました。少量でも匂うものが多かった記憶が。
An基を含む化合物の反応性が他の置換基を含むものとどう違うかを調べるのが主な実験の目的でした。Friedel-Craftsタイプの反応の位置選択性とか、An-ハロゲン結合の酸化的付加やAnCHOへの求核剤付加・電子移動等、多様な反応のテストとかにです。

An基中のメトキシ基が電子供与性なので、フェニル基と比較してベンゼン環の電子密度が高くなること、ベンゼン環を通して官能基の電子密度が同じく高くなることが、反応での反応性にどう影響を与えるか…。そういうのを調べてました。

反応以外では、π共役化合物の発光特性、例えば発光ピーク波長や発光効率が、An基中のメトキシ基の有無でどう変わるかを見ていましたし、溶解性についても検討したり、と。
メトキシ基て小さめの置換基なのですが、溶解性の影響が大きかった。これは、実験やってて驚きでした。

Tuesday, March 4, 2014

【本日の化学略語】BZP

BZP: benzophenone



もお世話になった有機化合物のひとつです。

主な用途は溶媒の乾燥。この化合物と金属ナトリウムと乾燥させたい溶媒を蒸留釜の中で混合・攪拌し、場合によっては加熱・還流させたりすると、ベンゾフェノンとナトリウムが反応して、脱水力を持つナトリウム−ベンゾフェノンケチルやナトリウム−ベンゾフェノンジアニオンとなるのです。テトラヒドロフラン(THF)の場合は、濃い紫色になるまでじっくりと反応させてました。青だと乾燥がイマイチなんですよね。

最近ではもっといい乾燥剤がありますし、ナトリウムは扱いがアレなので、使われなくなりつつある…かな。

ベンゾフェノンには独特の香りというか匂いがありますが、ベンゾフェノン臭のするグッズ、Francfrancで見つけました。さきっちょに細いナイロンのような糸が束ねてある、Ziboのロゴが刻まれてるホコリとり。

株主優待で買ってもう4年は経つと思うんですが、まだ香りがします。

Monday, March 3, 2014

【本日の化学略語】MTBE

MTBE: methyl tert-butyl ether



ガソリンの添加剤として一時期脚光を浴びたこともあった化合物。
実験用途としては、引火性の高いジエチルエーテルの代用として、抽出溶媒として使用したことがあります。動物実験での発ガン性が認められているので、扱いにはそれなりの対策が必要。

使用感ですが、ジエチルエーテル(沸点35℃)よりも沸点が高い(55℃)いものの、抽出溶液の濃縮に不便を感じることはありませんでした。ただ、MTBEは極性があまり高くないようで、水層からの抽出力はジエチルエーテルに劣ってました。炭化水素のヘキサンやトルエンと大差ないかも。

個人的に困ったのが、MTBEの除去。濃縮や再結晶後にNMR測定を行うと、MTBE由来のシグナルが。シングレットがピコーンと。tert-ブチル基があるので、よく見えるんです。

Friday, February 28, 2014

【本日の化学略語…ではありませんが】Michler's ketone

Michler's ketone: 4,4'-bis(dimethylamino)benzophenone


希土類金属との反応性を調べるための実験で使ってました。光反応の増感剤や色素の原料として知られる化合物です。

類似の化合物でもっと頻繁に扱っていたのが、この化合物の酸素原子が硫黄原子に置き換えられた、ThioMichler's ketone。市販品は濃い紫色の針状結晶でしたでしょうか。試薬棚にストックされていたものをラボでよく使われる手法で希土類金属を反応させ、生成した化合物を分離すると淡黄色の結晶がたくさん採れたのです。

おっしゃ採れたど〜と、早速NMR測定用のサンプルを作るべく、チューブの中に結晶を放り込み、重クロロホルムを加えると…あれ?深緑色…。

まあいいやと測定したのですが、シグナルは全く現れず。溶液を取り出し、濃縮・乾燥させても深緑のまま。ああ、壊れてしまったのかと、クロロホルムはいかんねぇと。

んで、重ベンゼンを溶媒に加えると、溶液は淡黄色のまま。NMR測定できました。生成物はtetrakis[4-(dimethylamino)phenyl]ethylene。カルベンできてホモカップリングというわけです。

Michler's ketoneとは反応性が違うということで、新しい研究テーマとなったのでした。
後でわかったのですが、ジメチルアミノ基があるThioMichler's ketoneを試したのが幸運でした。ジメチルアミノ基のない場合は反応が少し複雑。


Thursday, February 27, 2014

【本日の化学略語】EDB

EDB: ethylene dibromide



実験での主な使用目的は、Grignard反応剤を調整する時の、金属マグネシウムの表面活性化でした。

教科書的には、Grignard反応剤は有機ハライドと金属マグネシムをエーテル中で混合するとできるのですが、使用する金属マグネシウムの表面が酸化されていたり、エーテルや有機ハライドに水分が含まれていたり等、様々な要因により有機ハライドと金属マグネシウムが反応しない事態が生じます。最悪なのが、反応が突然始まりかつ急速に進行して、エーテルが反応熱を吸収しきれないケース。反応の制御に失敗し、火災等の事故につながりかねません。

これを避ける策として、予め金属マグネシウムと少量のダミーの有機ハライドをエーテル中で混合して反応させることにより、マグネシウムの酸化皮膜をはがして金属面をむき出しにしておくことにより、有機ハライドとマグネシウムの反応をスムーズにする、というのがあります。そのダミーの有機ハライドのひとつが、このEDBというわけです。

この手法、マグネシウムだけでなく、希土類金属でも同様でして、希土類ではヨウ化アルキル、例えばヨードメタンや1,2-ジヨードエタンが使用されます。

Wednesday, February 26, 2014

【本日の化学略語】XL

XL: p-xylene



沸点が139℃と高いので、特に溶媒と使用した時には除去に苦労した記憶があります。逆に、沸点の高さを利用して高温の反応を行うのには便利でした。また、低沸点物を基質とする反応をGCで追跡する時にも重宝しました。

沸点の高さも利点になり得ますが、分子の対称性の高さもメリットでした。反応を追跡する際、1H-NMRを使用するとなると、脂肪族・芳香族領域のシグナルが1本ずつとシンプルなp-xyleneは都合が良かったのです。トルエンだと芳香族領域が複雑になりますし、ベンゼンだと沸点が低い、と。

反応の基質として使用した場合も、生成し得る異性体の数もトルエン等と比較して少ないですし、ベンゼンと比べて反応性に富む等、いろいろメリットあり。

そんなこんなで、溶媒に、反応の基質にと、頻繁に使用しました。基質兼溶媒というケースが一番多かったような。

Tuesday, February 25, 2014

【本日の化学略語ではありませんが】Lawesson's reagent

Lawesson's reagent:  2,4-bis(4-methoxyphenyl)-1,3,2,4-dithiadiphosphetane-2,4-disulfide




カルボニル化合物をチオカルボニル化合物に変換する時に使用していました。同じことは硫化リンでもできるのですが、Lawesson試薬の方が有機溶媒に対する溶解性に富んでいるので、大スケールでの合成をしない限りは、硫化リンではなくLawesson試薬を使用していました。

このLawesson試薬、市販品もあるのですが、硫化リンとアニソールから簡単に合成することができます。Org. Synth.あたりにも載ってると思います。混ぜて飛ばして再結晶、そんな感じだったと思います。丁寧に合成したLawesson試薬は鮮やかな黄色い結晶です。劣化したり不純物が入っていたりすると、茶色っぽくなってたと思います。このあたりは、Pd(PPh3)4と同じですね。

においはというと、硫黄原子が含まれる化合物でしたが、強烈ではなかったような。ほのかにH2Sの香りがしてたかなあ、という記憶です。

Monday, February 24, 2014

【本日の化学略語】 TsOH

TsOH: p-toluenesulfonic acid


有機酸触媒として最も使用される化合物のひとつと思われます。私が最初に使用したのも、酸触媒としてだったと思います。ベンゾフェノンとアニリンからケチミンを合成する際、溶媒をトルエンとして共沸脱水していましたので、硫酸や酢酸では都合が悪い、ということでTsOHをチョイスしていた、と。TsOHは有機溶媒に対する溶解性が割と良かったので。

学生時代には、希土類ルイス酸触媒存在下での新反応を探索していましたので、ルイス酸触媒の性能を相対的に評価するためにも、TsOHを使用していました。TsOHはプロトン酸触媒ですので一概に比較はできないのですが、安価でしたので、とにかくこいつの性能を超えなければ話にならなかったのです。

最近では様々な機能を持つ有機酸触媒が多数報告されていますが、こいつに勝るものはないんじゃないかな、と思ってます。固体ですから取り扱いも楽です。

Friday, February 21, 2014

【本日の化学略語】CyH

化学略語の検索サイト→Nanoniele

CyH: cyclohexane
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=CyH)



シンプルな構造で、容易に入手可能な薬品ですが、私が使用することはありませんでした。ラボ内の他の学生さんやスタッフが、新規反応の探索の際に、モデル基質として使用していたのは良く憶えています。シクロヘキサン分子中の水素が全て「いちおう」等価なので、C-H結合活性化反応を調べるには適していました。他の炭化水素と比べても、反応性が高かったような。

このシクロヘキサン、炭素数が6ではありますが、同炭素数のヘキサン(-95℃くらい)と比較しても融点が高いのです(6.5℃)。なんとベンゼン(5.5℃)よりも高い。

ある冬の朝実験室に入ると、中身が真っ白いフラスコが。何が起こったのか一瞬わかりませんでしたが、シクロヘキサンが「凍って」いたのでした。「シクロヘキサンのはずだよなぁ、これ」とか思いながら、融点を調べた記憶があります。


Thursday, February 20, 2014

【本日の化学略語】ANI

化学略語の検索サイト→Nanoniele
 ANI: aniline
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=ANI)



アルジミンやケチミン合成の原料に使用していました。反応探索の基質に使用したことはなかったと思います。

アルジミンの中で良く合成していたのがベンズアルデヒドとアニリンを反応させて得たもの、ケチミンはベンゾフェノンとアニリンを反応させたものでした。
前者は還元反応や還元的カップリング、脱水素カップリング等の、新規反応の探索に、後者は、希土類金属と反応させてケチミンジアニオン錯体とし、これを触媒とする反応の探求に使ってました。

希土類金属とケチミンを反応させて得られる錯体、他の遷移金属にはない触媒活性を見せてくれました。最近では、希土類金属よりもより入手が容易なカルシウムでも同等の性質が観測されることがわかり、関連の研究のトレンドはカルシウムに移って来てます。

話はアニリンに戻りますが、アニリンそのものは無色の液体。でも、酸素や光にさらされると赤みを帯びてきます。酸化されたり重合したり、いろいろ原因はあるのですが、原料合成に使用するのであれば、私の場合、特に気にせず使ってました。
反応探索の基質として使用するのであれば、蒸留したものをただちに使用してたんだろうと思います。

Wednesday, February 19, 2014

【本日の化学略語】Piv

【本日の化学略語】 化学略語の検索サイト→Nanoniele

Piv: pivaloyl
 (http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=Piv)




画像はPivOHです。 研究室の試薬庫にPivOHが入ってました。私は使ったことはないのですが、学生時代は友人がDIBALH還元してPivHにしていましたし、数年前にはラボの学生さんがPivOHを添加剤に使って新反応を追いかけていました。

Piv絡みで私が扱ったのは脱保護くらいでしょうか。研究室のゼミでPivのある論文を紹介したことは多々あります。


Tuesday, February 18, 2014

【本日の化学略語】DCC

化学略語の検索サイト→Nanoniele

DCC: 1,3-dicyclohexylcarbodiimide (http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=DCC)



学生時代には使ったことのなかった試薬です。
高校時代の友人から何年ぶりかに、「この化合物が欲しいのだが、合成委託するとくそ高い!お前できるか?」と連絡があり、共同研究という形で数ステップの合成の2ステップ目に、単純な縮合反応での脱水剤として使ったのが最初であり、最後でもありました。

DCCは固体ですが、縮合反応の脱水剤ですから、秤量時に望まないところに付着したDCCはすぐに大気中の水分と反応し、ベトベトに。反応に使用したのは乾燥した時季でしたから、湿度が高いと扱いはもっと大変だったかもしれません。
「反応後のDCUの除去がねぇ…」と耳にしたことがありましたが、どうだったかな、記憶がないということは、あまり苦労はしなかったのかも。

今ではDIC等、様々なカルボジイミドがありますから、適材適所で使えばいいんだと思います。

Monday, February 17, 2014

【本日の化学略語】TPPO

化学略語の検索サイト→Nanoniele TPPO: triphenylphosphine oxide (http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=TPPO)

   

この化合物を原料にとある化合物を作りまくった経験はあります(詳細は伏せます)。

TPPOといえば、Wittig反応の成れの果てで、学生時代やポスドク時代に、研究室のメンバーがこの化合物をシリカカラムで取り除いているのを離れたところから見ていたのを憶えています。

私自身がTPPOに触れたのは、学生時代では、希土類を使う新反応の探索している時でした。希土類金属触媒の配位子として、試しに添加して、何かいいことが起こらないかと淡い期待を抱いて結果が出るのを待っていました。反応探索自体が当たりに巡り会えないものであり、なかなか思う通りにいかないのですけどね。たいていは、no reactionか、TPPOが脱酸素されてTPPが生成というオチでした。実験自体が楽しかったので、「しょうがない、次の反応だ」と。

Sunday, February 16, 2014

【本日の化学略語】CAL

CAL: cinnamaldehyde
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=CAL)

 

 学生実験で合成しました。

ベンズアルデヒドとアセトアルデヒド、水酸化ナトリウム水溶液を混ぜて攪拌して、蒸留したのだと思いますが、CAL特有のあの香りが実験室に充満し、香料も大量にかぐときっついなあとか言っていたような気がします。

研究室に配属後は、希土類触媒や反応剤との反応でCALを使っていました。たいていはベンズアルデヒドや3-フェニルプロパナールとの比較で、二重結合がある化合物がモデル反応に適用できるかを、調べていました。他の化合物と特に差異がなかったり、CALが重合してしまったり、全く反応しなかったりとか、モデル反応毎に結果も異なっていました(だからこそCALを使ったわけですが)。

使用後はしばらくの間、CALを香りを楽しむことができたのを憶えています。

Saturday, February 15, 2014

【本日の化学略語】BzH

化学略語の検索サイト→Nanoniele

BzH: benzaldehyde

(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=BzH)


学生実験で、シンナムアルデヒド合成の原料に使ったのが初めてでした。
学部の4年に研究室に配属されて初めて減圧蒸留したのもこの化合物で、以来、長期間この化合物に触れる機会がありまして…。
最も多い使用目的は、アルジミン合成でした。

このベンズアルデヒド、香料として使われるくらい、少量でもとても「香る」化合物で、実験台や天秤、衣服に少量でも付着すると、いつまでも匂いが残るのです。

また、ベンズアルデヒドを量り取るのに使ったシリンジ等を、すぐにきれいに洗わずに放置したり、いい加減に洗ったりすると、付着したベンズアルデヒドが酸化され、洗うのに苦労するばかりか、別のサンプルを量り取る時のコンタミの原因にもなったり。

…とまあ、ベンズアルデヒドはいろいろと「わかりやすい」ので、教育的観点からとてもありがたい化合物でもありました。

Friday, February 14, 2014

【本日の化学略語】KSA

化学略語の検索サイト→Nanoniele

KSA: ketene silyl acetal
(http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=KSA)


(画像は酢酸エチルのケテントリメチルシリルアセタール)

大学4年生になり、研究室に配属されて初めて大量合成した化合物です。
酢酸エチルをLDAを反応させてリチウムエノラートのした後に、TMSClと反応させると生成します。

生成はするのですが、シリルエステル異性体も副生してしまうため、精製がとても厄介。
何度蒸留しても、こやつ↓



が混じってしまうため、蒸留だけをする日々が3ヶ月くらい続いたのです。

実は、KSAとこのシリルエステル、熱力学的には後者の方が安定で、適当なルイス酸を放り込んでやると、KSAがシリルエステルになってしまいます。最近は静かになりましたが、向山型アルドール反応反応が進行しない場合に、このシリルエステルが生成している可能性を疑っても損はないと思います。

Thursday, February 13, 2014

【本日の化学略語】DPMS

化学略語の検索サイト→Nanoniele DPMS: diphenylmethylsilane (http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=DPMS) 大学院の博士課程の時に良く扱いました。灯油のような香り。 希土類触媒を使ってアルキンのヒドロシリル化を検討していました。当時の助教授の先生からの「ちょっとやってみてくれ」が始まりだったと思います。最初はトリエチルシランを使っていました。 反応仕込んで一晩攪拌した後、GCでチェックすると、ものすごく小さなピークが見つかったのです。「なんじゃこれ?」と、とりあえずシリカカラムで生成物を分離し、NMRスペクトルを測定してみると、ターゲットのビニルシランの類ではない、と。でも、アルキン由来の部位もヒドロシランの部位もあるしで、なんだろなとしばらく悩んでると、ああ、アルキニルシランだ、そういえば反応開始直後に気泡のようなものが出てたなぁと。そう思ってIRMSスペクトルをとってみると、ビンゴでした。アルキンとトリエチルシランの脱水素カップリングが起こっていたと結論。 均一触媒下でのCDCのひとつですね。 その後、この反応を学部4年の新入りさんが追求することに。トリエチルシランでは収率が10%台と低いので、どうしたものかと思っていると、助教授の先生が「フェニル基ついたシランがええど」と。ここでDPMSを試すと、反応時に大量の気泡が発生し、アルキニルシランが高収率で生成。 ヒドロシランの性質を熟知した先生、さすがだなぁと思ったのでした。

【本日の化学略語】HFIP

化学略語の検索サイト→Nanoniele HFIP: hexafluoroisopropyl alcohol (http://www.nanoniele.jp/cgi-bin/nanoniele.cgi?inputsite=weblog&keyword=HFIP) 使用たことはないのですが、試薬ボトルが学生時代の研究室にあったのは憶えています。小さいボトルで開封済みで、誰が何に使ったのかはよくわかりません。 ポスドクになって、ラボの研究員さんが高分子の分子量測定に使用していたのが、「使っているのを見た」最初だったと思います。高分子の側鎖の官能基のため、THFやクロロホルム等の移動相では相対分子量が正確に出ない(高分子と固定相との相互作用が強すぎる)ため、HFIPを使ったのだそうです。ラボというか、研究機関の資金が潤沢だったので、大量に使用することができたんだと思います(値段見て驚きました)。 回収したのかな、あれ。